「ただの麦ばい。」
佐賀で迎える初めての初夏。
黄金色に波打つ大麦畑を見て、「テレビで見たような黄金の景色だ」と思わず息を呑んだことがある。

けれど、地元の人は誰も共感しなかった。
生活する環境が違えば、感性も違う。
単身赴任というきっかけでこの地に降り立ち、気づけば移住して3年が経っていた。
今でこそ気の置けない仲間がいるが、初期のころの私は、いわば「迷子」だった。
地図アプリで現在地を見ても、知らない地名ばかりで目印にもならない。
「ここはどこだ?」
地味に募るストレス。
今思えば些細なことかもしれない。
でも当時の私には、それを言い合える仲間が欲しかった。
そんなタイミングで、グループLINEが鳴った。
「いつもの中華屋に19時集合!」
あの時の孤独感を、私は今でも鮮烈に覚えている。
人は共感を得たがる生き物
佐賀の人は基本的にとてもやさしい。
「閉鎖的なのでは?」と聞かれることもあるが、
ほとんどの人には当てはまらないと思う。
ただ、東京と違うのは、
人間関係がとても強固だということ。
親族。
同級生。
長年続くつながり。
関係が、時間をかけてコツコツ積み上がっている。
だから、佐賀の人が仲間内で話しているとき、
外部の人間には少し入りにくい空気を感じることがある。
これが「閉鎖的」と勘違いされているのかもしれない。
東京のように、
「気が合えば、とりあえず飲みに行こう」
という量産型のコミュニケーションとは、やはり少し違う。
少し話は変わるが、
佐賀のお年寄りのコミュニケーション力は、本当にすごい。
スーパーで買い物をしていると、
「どれがよか?」
突然、お年寄りが話しかけてきた。
どうやら柑橘を探しているらしい。
あたかも肉親のように、パーソナルスペースを軽く飛び越えて、自然に会話ができる。
この距離感で人と話せる技術は、
一朝一夕で身につくものではない。
佐賀のお年寄りは、コミュニケーション学の講師をやったほうがいいと思う。
今では、このお年寄りのバイタリティーが、佐賀で一番好きなところだ。
佐賀における仲間づくりの最適解とは
佐賀に限ったことではないが、多くの地方都市では、
外から来た人は「そのうちいなくなる人」と思われることが多い。
悪気はない。
実際、数年で戻る人も多いからだ。
だから最初は、どこか「お客様扱い」になる。
優しい。
でも、距離がある。
だからまず大事なのは、
「この人は残る人だ」と伝わること。
口で言うのではなく、
行動で示すこと。
定期的に顔を出す。
同じ場所に立ち続ける。
小さな約束を守る。
信頼はイベントでは生まれない。
反復の中で少しずつ育っていく。
いまの私の日常には、
毎日の散歩がある。
愛犬つくね(保護犬1歳)と歩く、いつもの道だ。

麦畑の横を通りながら、
季節が変わるのを感じる。
あの頃は、
この景色を誰とも共有できなかった。
でも今は、
ここに知っている顔がある。
佐賀で仲間をつくる最短ルートは、
派手なネットワークづくりではなく、
同じ場所に立ち続けること。
月イチ 若楠 / Friday Club
佐賀の移住者・転入者がゆるくつながる交流会
月1回・少人数で集まる夜。移住者も地元の人も、立場を外して同じテーブルにつきます。
ひとり参加歓迎・参加無料。





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